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グッバイ・サマーバケーション

 
 
 家の近所にある一時間に一本しか電車のやってこない殺伐とした駅は、最近になって改装だか、なんだかで道路側からホームが吹き抜けになって見えるようになった。
 確かに風景としては気持ちのいいものになったのかもしれないが、イチャイチャする高校生ばかりが目立つ駅のホームはただの地獄絵図だ。
 そんなことを思いながら車で今日も駅を横目に通過する。
 僕ももうすぐ二十四歳を迎える。
 まだこの街を抜け出せずにいる。
 電車道がどこまで続いているか分からない。
 夏を前に謂れのない絶望と虚無に嫌な汗が出る。
 もう少しましな明日に突然変わってくれないだろうか、くれないよなぁ。
 そんなの分かってる。
 そうだ――――。
 本を片手に意気揚々と旅に出ることを決意する。
 仕事を七月いっぱいでやめる予定だったのでこの休みを利用しない手はない。
 少しだけ遠くに、知らない場所に。
 ビバ・サマーバケーション。グッバイ地元。
 持ち物は一冊の小説とギター(テレキャスター)。僕の二つの宝物を持って行こう。
 ひとまず今日は地元に唯一ある楽器屋「吉野楽器店」へ。
 個人経営まるだしの外観とは裏腹に中々商品は揃っている。
 今日は修理にだしていたテレキャスを取りに来たんだ。
「あー、君か。もう修理終わってるよ。今回ネックの反りが酷くてさ」
 店長はよく喋る人だった。陽気で良い人だ。
「夏場は管理しないとダメだよー」
「あっ、はい」
「車に積みっぱなしとか一番ダメだからね」
 鼻の下の伸ばしたヒゲは僕の記憶が確かなら半年前くらいから店長が格好つけはじめた時期の生き残りのオシャレポイントだ。
 しかし、まあ陽気さを演出するためには必須アイテムだろう。
 そのおかげで僕も話しやすくなったし。
「テレキャスといえばナカコーでしょ」というと「いやいや向井さんでしょ」というような間柄になったわけだが。
「あっ、店長。僕しばらく旅行に出ようと思ってるんです」
「えっ、どこに?」
「まだ決めてないんです」
「あっそうなんだ。お土産よろしくね」
 意外とサバサバしているのも僕は好きだった。
 去年の夏といえばこんな田舎にまで来てわざわざ開催してくれる夏フェスにいったんだよなぁ。
 その時にサカナクション見て「時代はサカナクションだっ!」って興奮していたのを覚えている。
 今はその気持ちもどこにしまったか分からなくなってしまった。
 今年はサカナクション来ないから残念なわけですよ
 いやいや、今はそんなロキノン系の話なんてどうでもいいんだ。
 そもそもロキノン系なんて呼称自体がそんなに好きじゃないというか……いやいや、そんな話はどうでもいい。
「エヴァは新劇場版しかみたことないです」って発言くらいどうでもいい。
 もう僕の思考がどうかしてる。
 旅に出る話がしたいんだ僕は。
 ギターを持って旅行だなんてなんだか「けいおん」みたいだなー、なんて考えたけど、こっちは一人旅。
 あずにゃんがいない。あずにゃんがいないんだ。
 僕は途方に暮れた。
 今日の夕飯は寿司にしよう。インド人のためにカレーのちライスを歌おう。日本をインドにしてしまおう。
 あっ、やっぱカレーにしよう。
「俺にカレーを食わせろ」
 オーケンも言ってたじゃないか。
 楽器屋の帰り道、本屋に寄った。
 モーニング・ツーでてるじゃん。
 西島大介先生の「すべてがちょっとずつ優しい世界」
 書籍は真っ平で次のページに進むことしか手段がない。
「どうして?」
 その問いかけに僕らが返答してやり取りすることはできない。
 でもそれが可能なほんの隙間が一瞬だけ見えた気がしたんだ
 
 やっぱり僕は旅に出ることを決意した。(続く)
 
 
 
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湯ノ浦ユウ

Author:湯ノ浦ユウ
小説家。ネット詩人。新刊「LOST×LOST×LOST 」コミティア等で頒布中。合同誌「ユニゾン」を企画。お仕事のご相談お気軽にどうぞ。https://twitter.com/yunourayou
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mail:yunourayou@gmail.com

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